第14回ぶどうの会演奏会「大英音楽罐」

演奏会に寄せて

 つい先日までロンドンでは、平和の祭典 “オリンピック” が全世界から注目を一身に集めて、華やかに開かれていました。その開会式、そして閉会式では、多様な顔を持つイギリスの音楽が、見事な演奏を通して表現されていて、聴く者に深い感銘を与えていました。今日私たちは、明治維新以降我が国に、文化、軍事、産業と、多岐にわたって、多くの影響を与えてきたヨーロッパの国々の中から、イギリスの歌に焦点をあわせて、コンサートを開いてみたいと思っています。
 ヨーロッパの大陸からドーバー海峡によって隔てられた島国。大陸とは常に一線を画し
て育ってきた音楽、独立心の強い幾つかの文化の連合体であるイギリスには、一言ではくくることのできない多様な歌が、多様な文化のもとに息づいています。日本人の心の琴線に触れるそれらの歌を、明治維新によって長い鎖国から目覚めたばかりの日本人は、歌詞を日本語に置き換えることで、我が物としてきました。近代化のためという目的を超えて、時代と共に盛衰を繰り返し、歌詞も、時には題名も時代と共に変化しながら、幾たびかの戦争の歴史を乗り越えて、今日まで歌い続けられてきた歌がたくさんあります。中には既にイギリスの歌であることさえ忘れられて、歌い続けられている歌もあるのです。
 海に囲まれ、海に守られながら、文化的巨人である大陸から距離を保ち、独立を保ち、自国の文化を守り、育んできたイギリスと日本。そのイギリスには、どのような歌の世界が広がっているのでしょうか? そして、どのように日本の心と融合していったのでしょうか? わずか一度のコンサートでは辿るべくもない、涯ての知れない広大な海原に、三村先生の描かれた海図を頼りに、今日、初めて船を漕ぎ出す思いです。

ぶどうの会代表 田中 明

イギリスの音楽と日本:100年の物語

 田中明先生から「イギリスをテーマにコンサートをするので、企画を手伝ってほしい」と話があり、気楽に引き受けたらさあ大変! バードとパーセル、あとはパリーかな…と油断していたら、行き着いたのはイギリス民謡と日本の唱歌。みんなで楽譜を集め、選曲、構成…と作業が続くにつれて、しだいに「明治維新からの100年間、日本の大衆に英国の音楽がどう受け入れられたのか」というストーリーが見えてきました。
 この100年間に、イギリスは音楽不毛の地から一大発信源へと生まれ変わっていました。英語のポピュラー音楽が当然のようにカッコ良かった1970 ~ 80年代、ロック小僧だった私には日本語で歌うイギリスの歌には違和感がありました。学校唱歌で日本の大衆が西洋音楽に触れてからほんの100年。英語のメロディーに日本語の歌詞をつけることは、想像以上に難事業だったはずです。今日のコンサートでは、明治期の人々がいかに苦労して西洋音楽を日本の文化に取り込んだのか、そして、いまイギリスの音楽がいかに身近なものになったのか、感じ取っていただければ幸いです。

帝京大学外国語学部准教授 三村 明

演奏会情報

日時

2012年9月30日(日) 14:00開演

場所

府中の森芸術劇場ウィーンホール

企画

ぶどうの会事務局
三村明(帝京大学外国語学部准教授)

制作

第14回ぶどうの会演奏会実行委員会

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プログラム

The Armed Man : A Mass for Peace

作曲
Karl Jenkins
指揮
田中 明
ピアノ
田中 千香子
演奏
コーロ・ヴェルデ
演奏曲
Kyrie
Sanctus
Benedictus
Agnus Dei
Hymn Before Action

シェイクスピアの四つの恋唄  

作曲
池辺 晋一郎
指揮
田中 明
ピアノ
田村 ルリ
パーカッション
服部 ぼぶ
演奏
コーロ・ステラ
演奏曲
恋人のまことの心(ハムレットより)
あの人帰ってくるかしら(ハムレットより)
柳のうた(オセローより)
恋のこころは(まちがいつづきより)

ほたるの光も英国製
~思わず口ずさんでいたイギリスの歌~

指揮
田中 明
ピアノ
浅海 由紀子
お話
三村 明
演奏
ぶどうの会
演奏曲
故郷の空
白百合
庭の千草
螢の光
埴生の宿
スコットランドの釣鐘草
O Danny Boy
Scarborough Fair
Norwegian Wood
Bohemian Rhapsody













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