第13回ぶどうの会演奏会「白秋幻燈」


昭和17年(1942年)11月2日、白秋の死後、枕元に置かれたノートの類の中から、柳河の写真集『水の構圖』〈昭和18年(1943年)1月25日発行〉の序文と未完の顚末記が発見されました。共編者・田中善徳宛の親書に「昨日夜をとほし、水の構圖のはしがき、そのほかいろいろ整へ申候。あと顚末記半ばにして果て申可く候。息切れ甚だしく心命かたむけ候」と書き送っています。死の一月ほど前、10月2日の夜半に顚末記を完成させて、はしがきと一緒に渡そうと考えていながら、遂に半ばにして終ったのです。『水の構圖』の序文は文字通り白秋の絶筆になりました。このはしがきを「夜ふけ人定まつて、遺書にも似たこのはしがきを書く。水郷柳河こそは、我が生まれの里である。この水の柳河こそは、我が詩歌の母體である。この地相にして、はじめて我が體は生じ、我が風は成つた。」と書き出しています。

明治37年(1904年)19歳で全てを振り棄て、逃げるように出ていった郷里柳河、明治42年(1909年)、実家の破産にあい、一時帰郷して、父の莫大な債務を継承し、帰ることのかなわなくなった故郷、柳河への思いを込めて明治44年(1911年)、白秋の第二詩集 抒情小曲集『思ひ出』が刊行されました。少年時代の不安と怖れに彩られ、廃市と呼んだ故郷柳河に寄せるその序文は、新しい散文の世界を切り開きました。その後、詩人としての名声を得て、昭和3年(1928年)、43歳でほぼ20年ぶりに果たした空からの帰郷と、温かな故郷の人々の歓迎ぶりは、白秋の心を溶かして、その心を再び柳河に向かわせました。

柳河に生まれ、柳河に育てられ、また柳河に帰っていった詩人《北原白秋》の抒情小曲集『思ひ出』。この一冊の詩集から、信頼する作曲家、岩河智子氏の力も借りて、少年《北原白秋》を巡るコンサート、柳河を今も流れる掘割の水音が心に響くコンサートを紡ぎだしたいと考えています。

ぶどうの会代表 「白秋幻燈」企画者 田中 明
(「演奏会によせて」より)

演奏会情報

日時

2010年9月26日(日) 14:00開演

場所

府中の森芸術劇場ウィーンホール

企画

田中 明
ぶどうの会事務局

制作

第13回ぶどうの会演奏会白秋幻燈実行委員会

後援

北原白秋記念館
日本合唱指揮者協会

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プログラム

柳川風俗詩  

作曲
多田 武彦
指揮
田中 明
演奏
ぶどうの会男声合唱団

四つのうた  

作曲
清水 脩
指揮
田中 明
ピアノ
田村 ルリ
演奏
コーロ・ステラ

白秋と耕筰 ふたつのノスタルヂア
からたちの花

作曲
山田 耕筰
指揮
田中 明
演奏
Musicale Cosmos

Tonka John と 母

(委嘱初演作品)

作曲
岩河 智子
指揮
田中 明
ピアノ
田中 千香子
朗読
後藤 敦
演奏
ぶどうの会

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